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法人店頭FX取引に係る証拠金規制

 平成19年〜20年頃から、外国為替証拠金取引(以下、このページにおいて「FX取引」といいます。)では、取引の高レバレッジ化が目立つようになり、また、この頃には内外の金利差が縮小しており、一層の高レバレッジ化の進展が危惧されたこと等から、平成21年8月、金融庁により金融商品取引業等に関する内閣府令(以下、このページにおいて「金商業等府令」といいます。)が改正され、個人顧客を相手方とするFX取引に対し、仝楜卻欷遏↓金融商品取引業者又は登録金融機関(以下、このページにおいて「業者等」といいます。)のリスク管理、2疆投機防止の観点から、必要証拠金率(想定元本に対して最低必要な証拠金の割合)を一律4%以上とする証拠金規制が導入されました※1。

※1
 施行日は平成22年8月1日でしたが、施行日から起算して1年を経過する日までの間は、証拠金率を2%とする経過措置が設けられておりました。

 これにより、個人顧客を相手方とするFX取引の必要証拠金の25倍までの取引が可能となった一方、法人顧客を相手方とする場合は証拠金規制が導入されておらず、業者等が任意で証拠金率を設定しているという状況でした。
 そのような中、平成27年1月に起きたスイスフランの大幅な相場変動により、一部の法人顧客に証拠金を大きく上回る損失が生じ、その結果、業者等において多額の未収金が発生するという事態が発生しました。
 そこで、_召忘8紂為替相場の急変動等のリスクが顕在化し、主要通貨で同様の事態が生じた場合には、より多額の未収金が発生し、業者の財務の健全性に大きな影響を与えるおそれがあり、また、△錣国の店頭FX取引は極めて大規模なものとなっており、当該取引が滞ることとなれば、市場に大きな影響を与える可能性があると考え、為替相場の急変動等における業者の適切なリスク管理を確保する観点から、金融庁は平成28年6月14日に金商業等府令を改正し、法人顧客を相手方とする店頭FX取引についても証拠金規制を導入することとなりました(施行は平成29年2月27日)。


1.規制対象の範囲等について

 当該規制の対象は、法人顧客※2を相手方とする店頭FX取引※3(以下、このページにおいて「法人店頭FX取引」といいます。)であり、店頭通貨オプション取引などの店頭FX取引以外の通貨関連店頭デリバティブ取引(金商業等府令第123条第4項)は含まれません。
 また、既存のポジションを決済するために行う取引にも適用されません。
 なお、取引所FX取引の場合は、当該規制の対象ではありませんが、金融庁が認可する金融商品取引所が必要証拠金額を定めることになります。

※2
 金商業等府令第117条第1項第39号において、「個人、金融商品取引業者等又は外国において店頭デリバティブ取引を業として行う者を除く」者を当該規制の対象と規定しております。
 ここでいう個人は、金融商品取引法第2条に規定する定義に関する内閣府令第10条第1項第24号ロ(1)に掲げる要件に該当する業務執行組合員等(同項第23号)として通貨関連デリバティブ取引を行う場合における当該業務執行組合員等を除く、通常考えられる自然人としての個人(特定投資家を含みます。)を指します。
※3
 店頭FX取引は、金商業等府令第117条第1項第39号において「特定通貨関連店頭デリバティブ取引」と規定されています。

2.証拠金規制の概要

 法人店頭FX取引に係る証拠金規制として、金商業等府令が改正され、次の2点が禁止行為(金商業府令第117条第1項第39号及び第40号)に追加されました。

(a.)
法人店頭FX取引に係る契約を締結する時において顧客が証拠金預託先に預託した証拠金等の実預託額※4が約定時必要預託額5に不足する場合に、当該契約の締結後直ちに当該顧客にその不足額を証拠金預託先に預託させることなく、当該契約を継続する行為
(b.)
営業日ごとの一定の時刻(以下、このページにおいて「証拠金率判定時刻」といいます。)における取引に係る証拠金等の実預託額が維持必要預託額※6に不足する場合に速やかに当該FX取引に係る顧客にその不足額を証拠金預託先に預託させることなく、当該取引に係る契約を継続する行為((a.)に掲げる行為を除く。)

(a.)が新規建玉時、(b.)が営業日ごとの証拠金率判定時刻に係る規定で、業者等は、それぞれのタイミングにおいて、(a.)については直ちに、(b.)については顧客から速やかに必要な証拠金額の預託を受けることが義務付けられました。

 なお、個人顧客を相手方とするFX取引の証拠金規制では全通貨一律4%の最低証拠金率で固定されていますが、今回の法人店頭FX取引の証拠金規制は、通貨ペアごとに証拠金率が異なり、さらに少なくとも週1回の見直しが求められることになります。証拠金率の計算について、業者等は自社の価格等を用いて自社で行うか、計算業務を外部委託するか、又は本協会が計算し、公表する数値を利用することとなります。

※4
 証拠金の額に取引を決済した場合に顧客に生ずることとなる利益の額(以下、このページにおいて「評価益」といいます。)を加え、又は取引を決済した場合に顧客に生ずることとなる損失の額(以下、このページにおいて「評価損」といいます。)を減じて得た額(未払手数料については、既に確定したものについては、実預託額から控除されます。)
※5 ※6
 取引の額(いわゆる想定元本)に当該取引通貨ペアの為替リスク想定比率(当該通貨に係る為替相場の変動により発生し得る危険に相当する額の元本の額に対する比率として金融庁長官が定める方法により算出した比率)を乗じて得た額※7
※7
 「約定時必要預託額」、「維持必要預託額」、並びに「約定時必要預託額」及び「維持必要預託額」のいずれについても、以下、このページにおいて「必要証拠金額」といいます。

(1)新規取引時における証拠金規制

 2.(a.)は、新規取引を行う際に、取引の額に当該取引通貨ペアの為替リスク想定比率を乗じて得た額以上の証拠金を預託させなければならないというものです。
 金商業等府令第117条第1項第39号において「実預託額が約定時必要預託額に不足する場合に、当該契約の締結後直ちに当該顧客にその不足額を証拠金預託先に預託させることなく、当該契約を継続する」ことを禁止するという条文になっていますが、合理的な理由なく時間的な猶予を許容する趣旨ではないことに留意する必要があります。例えば、顧客が新規取引を行う際、その日のうちに決済を行うこと(日計り取引)を想定して、証拠金を預かることなく、取引をさせるといった行為は認められません。
 ちなみに、FX取引においては、通常、業者等が顧客から取引前に必要な証拠金額を預かる前受け制が採られています。

【例】
米ドル/日本円 1万米ドルを1米ドル100円00銭で新規に買うという取引の場合、

取引の額(想定元本)は、       100円00銭×1万 = 100万円
ドル円の為替リスク想定比率が1.5%の場合、必要証拠金額(約定時必要預託額)は、100万円 × 1.5%     =  1万5千円


(2)証拠金率判定時刻における証拠金規制

 2.(b.)は、営業日ごとの証拠金率判定時刻において、実預託額が必要証拠金額を下回った場合には、速やかに不足額を預託させなければならないというものです。
 証拠金率判定時刻は、例えばニューヨーク・クローズ等、業者等の判断により業者等ごとに定めることが可能であり、また、顧客ごとに定めることも可能でありますが、少なくとも1営業日に1回以上定めるものであり、業者等が恣意的に変更することなく、継続して適用することが求められます。

(不足額の充当)
 証拠金率判定時刻において、実預託額が必要証拠金額を下回った場合には、その時点で計算された不足額について、速やかに(1営業日といった事務処理に通常合理的に必要な期間内に)顧客に預託させる方法又は顧客に既存取引の一部を決済させる方法により当該不足額を充当するか、もしくは全部決済を行わなければなりません。
 証拠金率判定時刻において、実預託額が必要証拠金額を下回った場合に、追加の証拠金を求めることなく、直ちに既存取引の全部又は一部を業者等側で強制的に決済する方法も考えられますが、その場合は、あらかじめその方法について顧客に説明を行い、合意を得ていることが前提となります。
 一方、証拠金率判定時刻において、不足額が生じていた場合に、相場の変動による建玉の評価損の回復を待つといった運用は適当ではなく、業者等が事務処理に通常合理的に必要な期間内に定めた当該不足額の充当期限を迎えた時点で、相場の変動により評価損が減少し、実預託額が必要証拠金額に不足する状態が解消されていたとしても、いったん認識された当該不足額について追加預託又は既存取引の一部を決済することにより充当するか、全部決済を行わなければなりません。

【例】
 米ドル/円について、100円00銭で1万米ドルの買ポジションを保有していた場合、ある日の証拠金率判定時刻である午前7時(Xとします。)を迎えたときに1米ドル99円00銭であるとすると、

必要証拠金額ちょうどの証拠金を預託している状態だとすれば、

(99円00銭 - 100円00銭) × 1万 = ▲1万円 が不足金額となります。

 この不足金額1万円について、事務処理に通常合理的に必要な期間内に、顧客から入金してもらうか、反対売買することにより充当しなければなりません。この場合において、

<ケース1>
Xで計算された不足金額を追加する期限(Yとします。)を迎えた時点で、相場が好転し1米ドル=101円00銭になっていた場合、
(101円00銭 - 100円00銭) × 1万 = + 1万円 となります。このように評価損が消えて逆に評価益が発生している状況になったとしても、Y時点においては、X時点に計算された不足金額 1万円を充当する必要があります。

<ケース2>
Yを迎えた時点で、相場がさらに円高に進み、1米ドル=98円00銭となっていた場合の評価損は、(98円00銭 - 100円00銭) × 1万 = ▲2万円となりますが、Y時点ではX時点に計算された不足金額1万円を充当すれば足ります。

(補足)
ただし、その後、同ポジションを決済することなく、次の証拠金率判定時刻(X+1とします。)を迎えた場合、X+1時点で99円00銭を下回っていたとすれば、X+1で算出された不足額を、X+1に対する追加期限(Y+1とします。)までに差し入れる必要があります。(例えば、X+1において98円00銭の場合、評価損は(98円00銭 - 100円00銭) × 1万 = ▲2万円となりますが、Yにおいて1万円の証拠金の追加がなされ、もともとの証拠金額αに対して+1万円となっていることから、α-(α+1万円-2万円)=1万円がY+1までに差し入れるべき不足金額ということになります。)

(ロスカット取引との関係)
 法人店頭FX取引においては、法令上は業者等にロスカット・ルールの義務付けはありませんが、多くの業者等が自主的にロスカット・ルールを導入しています。証拠金率判定時刻において、実預託額が必要証拠金額に対して不足しており、事務処理のために通常合理的に必要な期間内において不足額の充当を求めている最中であったとしても、相場の変動により、業者等が定めるロスカット・ルールに抵触することとなれば、ロスカット取引が執行されることになります。


3.証拠金の計算方法等

(実預託額) 
 実預託額とは、証拠金等に、取引を決済した場合に顧客に生ずることとなる評価益を加え、又は評価損を減じて得た額をいいます。評価益又は評価損には、スワップポイント(通貨間の金利差調整額)の評価益又は評価損を含みます。また、未払手数料については、既に確定したものについては、実預託額から控除されます。
 実預託額のことを有効証拠金や実質証拠金といった用語で説明している業者等も多いようです。
 新規約定時及び1日1回の証拠金率判定時には、この実預託額が必要証拠金額を下回っていないかが確認されることとなります。

(必要証拠金額)
 必要証拠金額は、取引の額に当該取引の対象となる通貨ペアの為替リスク想定比率を乗じて得た額となります。為替リスク想定比率については、平成28年6月14日金融庁告示第25号において、定量的計算モデルを用いる方法で算出することとされており、定量的計算モデルについては次のように決められています。

・データの抽出要件
 次に掲げる全ての要件を満たすヒストリカル・データ(過去に実際に発生した価格変動を表す数値をいう。)を使用するものとする。

直近26週の期間を対象とした数値又は直近130週の期間を対象とした数値のいずれか高いものを採用すること。
各数値に掛目を乗じて得た数値でないこと。
少なくとも毎週1回更新されること。
 本協会では、上述の要件を満たす形で、法人店頭FX取引証拠金率を計算し、公表します。
 本協会の会員業者等は、自社の価格等で為替リスク想定比率を計算する代わりに、本協会が公表する数値を利用することができます。
 本協会は、会員業者等における当該規制への対応が適正かつ円滑に行われ、顧客が安心して取引できる環境づくりに寄与すること、また、第三者的な立場から本協会が算出した証拠金率等を公表することで、広く一般の投資者が各通貨市場のボラティリティを意識し、各通貨市場の変動リスクを認識する機会を提供し、業者等と投資者との間の情報の非対称性の減少緩和に努めることを目的としております。
 本協会による公表についてはこちらをご覧ください。

(必要証拠金額変更のタイミング)
 必要証拠金額を決める為替リスク想定比率は、少なくとも毎週1回更新されることが金融庁告示により求められているため、相場状況や業者等の設定方法によりますが、必要証拠金額は1週間ごとに変更になる可能性があります。
 ただし、更新から実際の取引への適用には、通常、最大で1週間程度の周知期間が設けられることになります。
 例えば、焼(金)が基準日だとすると、当該日から過去26週と過去130週のヒストリカル・データを使用してそれぞれ為替リスク想定比率を算出し、そのいずれか高い数値を採用することになりますが、1週間の周知期間がもうけられる場合には翌々週の月曜日からの適用となります。

【必要証拠金額の変更及び適用例】
必要証拠金額の変更及び適用例



 なお、上述の説明は、通常時のものであり、緊急時においてはこれと異なる場合がございます。

(複数の取引を行っている場合の必要証拠金額の計算方法)
 顧客が複数の取引を同時に行っている場合の必要証拠金額の計算は、取引ごとに計算する方法、複数の取引を顧客ごとに一括して計算する(通貨ペアごとにそれぞれの為替リスク想定比率を乗じて証拠金額を計算して合計する)方法のどちらも認められております。

金商業等府令第117条第26項第27項第28項)

(両建取引等について)
 同一通貨ペアで売り及び買いの両方の建玉を持つ両建取引がある場合、その部分についての証拠金等については、売り買いの取引額を比較してどちらか多い額を基準として必要証拠金額を算出できることとしております。同一通貨ペアで対当する建玉が複数ある場合は、その通貨ペアごとに計算することとなります。
  また、例えば、ユーロ/円の1万ユーロ買い、ユーロ/米ドルの1万ユーロ売りを行った場合、これを米ドル/円の買いと認識して証拠金料率を乗じるBOE(バンク・オブ・イングランド)方式は認められず、あくまで同一通貨ペアで対当する建玉がある場合に限り、その部分について少なくない額を基準とすることが認められております。

金商業等府令第117条第29項

【例】
米ドル/円を100円03銭で1万米ドル買い建てしたポジション と 同じく米ドル/円を
100円00銭で3万米ドル売り建てしたポジションが両建てとなる場合
 売り買いの取引の額を比較して多い額を基準とするので、
  買い: 100円03銭 × 1万 = 100万300円
  売り: 100円00銭 × 3万 = 300万円
 で、3万米ドル売りの取引金額300万円が基準となることから、例えば米ドル/円の為替リスク想定比率が1.50%だとすると、
 300万円 × 0.015 = 4万5千円 が必要証拠金となります。

(代用有価証券)
 業者等によっては、業者等が顧客から預託を受けるべき証拠金の全部又は一部について、有価証券をもって代用することを認めている場合がありますが、その代用価格は、いずれか一つの金融商品取引所における金融商品取引所等に関する内閣府令第68条第2項に規定する額※8とされております。

金商業等府令第117条第23項第24項

※8
 金融商品取引所が、金融商品取引法(以下このページにおいて「法」といいます。)第149条第1項※9の認可(その開設する取引所金融商品市場における市場デリバティブ取引の全部又は一部に関し、他の金融商品取引清算機関に金融商品債務引受業を行わせる旨を定款又は業務規程で定めた場合にあっては、法第156条の12※10の認可)を受けて定める基準日の時価に株価については100分の70、その他については当該取引所が同項の認可を得て定める率を乗じた額を超えない額
※9
 「金融商品取引所は、定款、業務規程又は受託契約準則を変更しようとするときは、内閣総理大臣の認可を受けなければならない。」と定められています。
※10
 「金融商品取引清算機関は、定款又は業務方法書を変更しようとするときは、内閣総理大臣の認可を受けなければならない。」と定められています。

4.施行日等

 当該規制に係る金融商品取引業等に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令は、平成28年6月14日に公布され、施行日は平成29年2月27日となっております。


注意事項等

  1. 本ページは、FX取引に係る規制見直しの概要を一般の投資者の皆様にわかり易くお伝えすることを目的としておりますので、金商業等府令や監督指針の条文の文言と異なる場合がございます。また、当該条文の内容を完全に網羅しているものではありませんのでご了承くださいますようお願い致します。金商業等府令の条文についてはこちらからご確認ください。
  2. また、規制の趣旨を逸脱しない範囲という前提でありますが、各業者等の実際の運用が、本ページの記載内容と完全に一致していない場合も考えられます。実際にお取引をされるに当たっては、お取引をされる業者等の契約締結前交付書面(取引説明書)等を十分にご確認ください。