Futures&Options

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- 第1章 先物・オプション市場
る」ヘッジ取引、原資産のポジション保持、裁定、ポジションの形成、価格づけ、そして完 全投機である。
ヘッジ取引
ヘッジャーの主たる経済活動は、なんらかの形で製造、流通、加工、貯蔵、または原資産 たる商品や金融商品に投資することである。これらの活動に内在する損失リスクを一定期間 内に最小化する必要がなければ、先物市場におけるヘッジ取引は行われない。 ヘッジ取引は現物市場での保有残高と反対方向のポジションを先物市場で形成することで ある。これは、先物でのポジションを現物市場でのリスクに対当させるという考え方である。 たとえば、原油生産者の場合、常に価格下落のリスクにさらされている。この原油生産者が、 仮に適正な量の原油先物を売れば、スポット原油価格の変化に起因するリスクを減少させる ことができる。つまり、ヘッジ取引により、現物市場で当該現物資産を保有し続けていても、 現物市場価格の変化に対して中立なので影響を受けなくなる。 このことは、現物資産が不足している場合にも同様である。たとえば、原油を買う公益企 業がその例である。公益企業はエネルギーコストを固定化するために、原油先物を買うこと がある。ヘッジ取引の後では、原油購入コストをすでに固定しているので、公益企業は原油 の価格動向からは影響を受けない。 適正なヘッジ取引は他の企業コストの削減にもなる。たとえば価格逆行による事業損失リ スクがヘッジ取引で軽減されている場合、しばしば銀行その他の貸付金融機関は、より積極 的に低金利で貸付けようとする。 ヘッジ取引は価格変化によるリスクを、逆のリスク構成をもつ者や、利得機会のためにリ スクを引き受ける意欲のあるスペキュレーターに移転することで軽減する。先物でヘッジに よるリスクを減らす興味深い結果は、ヘッジャーに有利な価格変化がある場合に生じる可能 性のあるより大きな利益まで逃すかもしれないということだ。
現物商品のポジション保持
先物市場は商品を在庫として保有するためのコストを賄うためにも活用される。小麦のよ うな農産物を例にとると、収穫されるのは年のうち2、3週間であるが、通年消費される。 農作物は収穫されてから消費されるまでの間、誰かが所有し、保管しなければならない。し かしながら、穀物貯蔵には費用がかかるうえ、貯蔵した商品の所有者は販売されるまで価格 の下落による損失を被るかもしれない。 13
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