#3 店頭FX業者の決済リスク管理へ対応

店頭FX業者の決済リスク管理に係る規制

金融庁は、金融資本市場におけるセーフティネットを整備する取組みの一環として、現行の店頭FX業者の決済リスクの管理が十分なものであるかについて検討を進めるため、2018年2月に「店頭FX業者の決済リスクへの対応に関する有識者検討会」を設置しました。
そして、2018年2月より6回に渡り検討を行い、同年6月13日にその結果を取りまとめた「店頭FX業者の決済リスクへの対応に関する有識者検討会」報告書を公表しました。
報告書には、店頭FX業者の決済リスク管理の強化に向けた今後の課題として、(1)ストレステストを通じた自己資本の拡充、(2)取引データの報告制度の充実、(3)未カバーポジションの情報開示(リスク情報開示)などといった具体的な対応策が示されました。
こうした提言を踏まえ、「金融商品取引業等に関する内閣府令」の一部改正により、上記(1)~(3)の規制が新たに導入されることになりました。

(1)ストレステストを通じた自己資本の充実
①背景
2015年1月のスイスフラン・ショック以降、本協会では、FX取引を取り扱う会員における為替リスク管理態勢の整備、強化に向けて各種取組んできました。
その一環として、各社共通の実施要領によるストレステストを2016年2月、2017年4月に実施し、協会規則によりストレステストの継続的実施等を義務付ける(2017年10月施行)など、業界としてストレステストを通じた為替リスク管理の強化を進めてきました。
そうした中、金融庁では年間取引規模が5,000兆円程度まで拡大した店頭FX取引について、仮に店頭FX業者が破綻すれば、顧客やカバー取引先に大きな影響があるほか、外国為替市場や金融システムにも影響を及ぼし、システミックリスクに繋がる可能性を有しているのではないかと考えました。そこで現行の決済リスクの管理が十分なものであるかについて検討を進めるためとして、同庁により、2018年2月に「店頭FX業者の決済リスクへの対応に関する有識者検討会」が設置されました。
2018年6月、当該検討会の報告書が公表され、そこにおいて「ストレステストを通じた自己資本の拡充」が求められ、「厳格かつ適正なストレステストを実施し、その結果を必要となる自己資本に反映させていくことが適当」とされました。
これを受け、金融庁では、金融商品取引業等に関する内閣府令を一部改正し(2019年4月1日施行、2020年1月1日適用)、店頭FX業者に対して、協会の自主規制規則に基づくストレステストを実施することを義務付けました。本協会では、このストレステストの実施に関する規則を制定しました。(2019年3月25日制定、2020年1月1日施行)

②ストレステストの実施
店頭FX取引を行う業者は、協会規則の定めるところにより、ストレステストを実施することが求められます。また、ストレステストの実施要領を制定し、具体的な実施方法などを規定しています。

「金融商品取引業等に関する内閣府令第123条第1項第21号の4に基づくストレステストの実施に関する規則」

(2)取引データの報告制度の充実
①背景
「店頭FX業者の決済リスクへの対応に関する有識者検討会」では、店頭FX業者の決済リスク管理の他に、取引の公正性や情報開示、顧客保護なども含めて広範にわたり議論されました。その結果、同年6月に公表された当該検討会の報告書において、業者には「ストレステストを通じた自己資本の拡充」などとともに、主に不公正取引の防止の観点から「取引データ報告制度の充実」が求められることとなりました。
これを受け、金融庁では、金融商品取引業等に関する内閣府令を一部改正し(2019年8月1日施行、2021年4月1日適用)、店頭FX業者に対して、協会規則に基づく取引情報の保存・報告を行うことを義務付けました。本協会では、これに合わせて自主規制規則を新たに制定しました。(2019年8月20日制定、2021年4月1日施行)

②取引データの保存及び報告体制の整備について
協会規則では、店頭FX取引を行う会員に対し、取引データの保存及び協会への報告体制の整備を求めています。また、その取組み状況については、協会の実地監査などで確認されることになります。

「金融商品取引業等に関する内閣府令第123条第1項第21号の7に基づく店頭外国為替証拠金取引に関する情報の保存及び同項第21号の8に基づく報告に関する規則」

(3)未カバーポジションの情報開示
①背景
過大な未カバーポジションを保有する店頭FX業者は、為替相場が急変動するとその影響を受け、多大な損失を被る可能性があります。そのため、店頭FX業者は、決済リスクへの対応という観点から、以下の3つのリスク情報について適時開示することが法令(*)により義務付けられました。
イ.未カバー率
 ➤ カバーされていないポジションは、為替相場の変動の影響を直接受けることになります。

ロ.カバー取引の状況
 ➤ カバー取引先が破綻した場合には、再構築コストなどが発生することになります。

ハ.平均証拠金率
 ➤ 証拠金率が低い場合には、顧客未収金リスクが大きくなります。

*金融商品取引業等に関する内閣府令第117条第1項第28号の2

②リスク情報の公表
店頭FX業者は、上記3つのリスク情報を自社のホームページで公表しいています。店頭FX取引を行うにあたって、当該リスク情報を確認することは、取引相手先の信用状態を把握するための有効な手段の1つとして考えられます。

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